おてんとうさまの下で記録 / 本文

休むことは、弱さではない

――大谷翔平選手の休養をめぐって
2026年9月3日論考スポーツ

ネット上に、大谷翔平選手の健康状態を心配する声があふれています。私も、同じ気持ちで見ています。

令和八年九月二日(日本時間三日)、ドジャースはカージナルスに六対八で敗れました。大谷選手は「一番・DH」で出場して四打数無安打。今季初めてとなる一試合四三振を喫し、打席の中で右腕を気にするそぶりも見せていたと報じられています。移籍後最悪となる六十打席連続の本塁打なし、十二試合連続で打点なし。数字よりも、スイングそのものが本来のものではなかった。それが、画面越しにも伝わってきました。

監督が「身体的な問題だ」と認めた

試合後、ロバーツ監督の会見は、勝敗ではなく大谷選手に関する質問で埋め尽くされました。監督は「皆さんが見たものと同じ」と述べ、翌日にトレーナーを交えて本人と話し合う意向を明かしています。八月下旬の遠征時点では、左膝や上腕二頭筋の影響を否定していた監督が、この日ははっきりと「身体的な問題だ」と言い切りました。

そのうえで、監督はこう続けています。今の状態でプレーしても、結局は誰の助けにもならない、と。休養は合理的な選択肢に見える、とも。負傷者リスト(IL)入りの可能性についても、否定しませんでした。

ここまで指揮官が公の場で語ったということは、もう本人の意思だけの問題ではなくなった、ということだと思います。

一、順位表には、休ませる余裕がある

ドジャースは八十二勝五十七敗で、ナ・リーグ西地区の首位。二位アリゾナが七十四勝六十七敗ですから、その差は八ゲームあります。残り試合は二十試合あまり。

つまり、大谷選手が数日、あるいは十日休んだとしても、地区優勝が揺らぐ局面ではありません。競技上の理由で休ませられない、という状況ではないのです。この余裕は、今しか使えません。

二、「数日」で足りるのか

ここが、私がいちばん考えているところです。

ロバーツ監督自身が、休養について正直な言い方をしています。一日か二日なのか、それとも十日休んで百パーセントに戻るのか、それは分からない、と。

左膝の炎症も、上腕二頭筋の違和感も、疲労とは性質が違います。三日休ませて打席に戻し、また同じスイングになれば、問題をそのまま十月に持ち越すだけです。

八ゲーム差という余裕があるのなら、ILの十日間をきちんと使うほうが、ポストシーズンに対して誠実な判断ではないでしょうか。「ILは大げさだ」という声もよく分かります。けれど今回に限っては、十日という数字は、むしろ味方かもしれないと思うのです。

三、投手復帰という、いちばん大きな判断

見落とされがちですが、八月二十九日のタイガース戦後、監督は三十日の復帰登板を白紙にすると明言しています。今季の投球を終えるかどうかについては「まだ決断していない」と含みを残したままです。

腕への負荷を完全に切り離すこと。これが、打者としての大谷選手を守るいちばん大きなレバーだと私は思います。ここを曖昧にしたまま打席だけ数日休ませても、根は残ったままです。

休養日を作るかどうかではなく、十月に何を残すか。判断の軸は、そこにあるはずです。

四、ロバーツ監督をどう見るか

監督の起用法には、以前から批判が寄せられています。今回も「判断が遅い」という指摘は、もっともだと思います。

ただ、私はやや擁護的に見ています。監督は会見で、大谷選手が休みたがらないことを承知していると述べ、その姿勢は尊重すると言ったうえで、それでも今の状態では誰の助けにもならない、と語りました。

これは、拒む選手を説得するための外堀を、記者会見という公の場で先に埋めにいった発言です。本人に直接ぶつける前に、周囲の空気を作った。決して手をこまねいていたわけではないと思います。

私たちにできること

外から見ている私たちにできるのは、応援することだけです。

けれど、ひとつだけ意味のあることがあるとすれば、休むという決断を「弱さ」として受け取らない空気をつくることではないでしょうか。

誰かを引き合いに出して「あの選手は休まずに出ている」と語ることは、たやすい。しかし体の状態は、人それぞれ違います。休養を歓迎する声が多ければ多いほど、本人も踏ん切りがつきやすくなる。

大谷選手、どうか一度、体をいたわってください。十月に、あの本来のスイングをもう一度見せていただきたい。それだけを願っています。

※本稿は、令和八年九月二日から三日にかけての報道および、ロバーツ監督の会見内容に基づいて記しています。選手の健康状態について、報道された範囲を超える推測は行っていません。
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