問題の核心──創造者は、なぜ報われないのか
書籍が書かれた瞬間に、著作権は発生する。絵が描かれた瞬間に、映像が撮られた瞬間に。日本が採用する「無方式主義」は、登録不要でその権利を認める。
だが現実はどうか。
その権利を「誰が、いつ、何を創ったか」と証明する手段がない。デジタル空間ではコンテンツが瞬時に複製・流通し、創造者への対価還元は著作権管理団体を通じた複雑な手続きに依存する。絶版・品切れ作品の著作者遺族には、そもそも対価が届かない。外国著作物への対応は、さらに困難だ。
ならば逆転の発想を採る。
使われるほど、創造者が潤う仕組みを作ればいい。
この提言は、その仕組みの設計図だ。ブロックチェーン技術とスマートコントラクトを組み合わせることで、「誰もが自由に使えて、意識せずに作者に対価が届く」世界を技術的に実現できる。
三本柱──新著作権保護インフラの設計
真正性保証
自動対価還元
個人情報保護との両立
価格決定の逆転発想
著作物の価値を事前に決めることは不可能に近い。無名の写真が突然バイラルになることもある。だからこそ、事前に価格をつけるのではなく「使われた量が価格を決める」という設計が有効だ。
誰も使わなければゼロ。億回使われれば高額になる。作者は価格を決めなくていい。使われた実績が、そのまま報酬になる。1回0.001円でも、億回使われれば100万円だ。
関連する法体系と必要な整備
| 法体系 | 整合性・対応 | 優先度 |
|---|---|---|
| 著作権法第31条 図書館等における複製 |
スマートコントラクトによる自動・直接払いへの移行を可能にする補完規定の追加が必要 | 最優先 |
| 電子署名法 | ブロックチェーン署名を明示的に含める政令・ガイドラインの整備が必要 | 高 |
| 個人情報保護法 | オフチェーン設計により法改正不要。即時着手可能 | 最優先 |
| 経済安全保障推進法 | 本システムを「重要技術」として内閣府の育成プログラム対象に指定することで整合 | 中 |
| ベルヌ条約 | 「無方式主義」との整合性は完全に確保できる(登録は任意のため) | 整合済み |
| WIPO著作権条約(WCT) | 第11条「技術的保護措置」としてブロックチェーンを明示。日本がWIPOの国際標準策定をリードできる | 中〜高 |
国立国会図書館への具体的提案
本提言はすでに国立国会図書館・電子情報部へ送付している。法改正を要しないフェーズ1として以下を提案している。
即時着手
本格稼働
完全実装
量子コンピュータ時代への備え
現行のSHA-256ハッシュは、今日の計算機では解読に事実上無限の時間を要する。だが量子コンピュータの本格稼働が現実となる2030年代以降、この前提が崩れる可能性がある。
ポスト量子暗号への段階的移行
米国国立標準技術研究所(NIST)は2024年、量子コンピュータに耐性を持つ暗号アルゴリズムの標準化を完了した。本システムの設計思想には、将来的なポスト量子暗号への移行計画を組み込む必要がある。具体的な技術仕様については、情報処理推進機構(IPA)・産業技術総合研究所との連携により策定することが望ましい。重要なのは今から設計思想に「移行可能性」を埋め込んでおくことだ。
量子耐性チェーンを世界に先駆けて実装した国が、
次世代の知財標準を握る。
日本にその機会がある。
世界への発信──日本発・新知財秩序の構築
まず概念に名前をつける
世界を変えた概念には、必ず名前があった。「インターネット」「ブロックチェーン」「オープンソース」──名前がつくことで、概念は伝播する。
この提言が目指す世界を、一言で表す名前が必要だ。提案する。
(普遍的創造的帰属)
誰もが自由に使えて、意識せずに創造者に対価が届く。
知識は解放され、創造者は報われる。その両立を実現する仕組み。
発信先と役割
RAI国家戦略との連携
本提言は、RAI(Refined Autonomous Intelligence)国家戦略と深く連携する。RAIが「日本の精神性をロボットに宿す」ならば、UCAは「日本の知的創造物に魂を宿す」試みだ。どちらも、中国・米国とは異なる「日本型の知的インフラ」の構築という一点に向かっている。
全体ロードマップ
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