二時間二十分。番組の歴史でいちばん長い回になりました。取り上げられた話題は十五を超えます。けれども、先生が何度も立ち戻られたのは一つの問いでした。——日本の報道は、いったい誰に遠慮しているのか。
フランスのデモ、イスラエルの総選挙、オバマ元大統領の演説。表面だけを伝えて、日本人が自分の将来を決めるのに要る背景を伝えない。百三十年前のオレンジ計画のときも同じだった、と先生は言われます。「アメリカに遠慮するんじゃなくて、日本国民に遠慮しろ」。
後半には、もう一本の線がありました。インフルエンザ、熊本の液状化、M9.9の緊急地震速報、そしてがん。謎が目の前にあるのに、科学者がそこへ向かっていかない。報道の怠慢と学者の怠慢は、同じ根から出ているのかもしれません。
10月下旬、フランス各地で物価高や教育環境の悪化に抗議する大規模なデモが行われ、政府発表で41万人が参加しました。パリやマルセイユでは、一部の参加者と警察が衝突しています。
先生は、日本の報道を見た人の多くは原因を取り違えているだろう、と言われます。高校の図書館がぼろぼろで使えない、という類の話は表面にすぎない。フランスは日本より百年以上早く、「国民が教育を求めれば国が応える」という関係を作った。早かったぶん、いまその緩みが出ている。年金を巡る混乱も同じ根にある、と。
そしてもう一段深いところに、先生は植民地の問題を置かれます。英国やフランスは三百年ほど、有色人種の土地からの「上がり」で暮らしてきた。その上がりがなくなり、しかも旧植民地からの移民を受け入れる責任も負っている。欧米のきちんとした論者の中にも、「三百年の悪が自分たちに跳ね返ってきている」と深く反省している人が少なくない、と先生は紹介されました。
ここから先生が引き出されるのは、日本への教訓です。三十年ほど前、「欧州は移民を受け入れているのに、なぜ日本は国際的な責任を果たさないのか」と説く文化人が多かった。しかし欧州の受け入れは、自分たちが植民地にした土地への責任から来ている。人手不足を理由に移民を増やそうとする日本とは、話の筋がまったく違う——先生はそう指摘されます。
共同通信によれば、10月24日のデモには内務省発表で計41万人が参加し、うちパリが約11万人。全国で動員された警察官らは約7万人で、マルセイユでは商店の略奪や破壊も起きました。その一週間前の17日にも、内務省推計で約55万人が参加したデモと暴動がありました。
報道では、発端は公立高校の老朽化や教員不足に対する高校生の抗議で、政府の歳出削減への不満と物価高が重なった、と説明されています。
「百年早い教育の普及」「植民地からの上がりの消滅」という読みは先生の歴史観によるもので、記録で確かめられる性質のものではありません。一方で、報道の側の「学校の荒廃が原因」という説明も、なぜ荒廃したのかまでは踏み込んでいない、という点は先生の指摘のとおりです。
10月27日のイスラエル総選挙は、ネタニヤフ首相の陣営、アイゼンコット元軍参謀総長の陣営とも過半数に届かない見通しとなりました。番組で紹介されたのは「アイゼンコット陣営がやや優勢」という一日前のニュースでしたが、先生は、その後の開票でネタニヤフ氏の党が第一党であることはほぼ間違いなくなった、と補足されます。
先生の読みはこうです。両陣営とも反アラブで、二十議席ほどのアラブ系政党と組むことはない。だから最も可能性が高いのは、組閣が失敗しての再選挙。次に可能性があるのは、力のあるネタニヤフ氏が相手陣営から議員を切り崩すこと。首相の座にあることは、自身が抱える刑事事件の行方とも無縁ではない。そうなればイランとの緊張も、ガザの惨状も、今のまま続く。
日本にとって何が問題か。石油がきちんと来るか、中東が落ち着くか、です。先生は、ネタニヤフ政権の継続は日本にとって不利で、混乱が長引いて得をするのは中国だ、と見ておられます。
さらに先生は、米国の政治資金や経済に占める親イスラエル勢力の大きさに話を広げられました。人口では少数の人々が、米国を通じて世界に大きな影響を持っている、という見立てです。
出口調査の数字は放送局によって割れました。アイゼンコット陣営52・ネタニヤフ陣営50とする調査がある一方、更新後にネタニヤフ陣営52・アイゼンコット陣営49と順位を入れ替えた局もあります。政党別ではネタニヤフ氏のリクードが24〜25議席で、アイゼンコット氏のヤシャル(21〜23議席)を上回る見込み。アラブ系の2政党は計18議席の見通しと報じられました。本稿を書いている時点で、最終結果と組閣の行方は確認できていません。
ネタニヤフ氏が三つの事件で起訴され、在任のまま公判が続いていることは記録で確かめられます。ただ、首相を降りればすぐ逮捕される、という関係までは記録から読み取れません。続投が本人に有利だという見方は、政治的な読みにとどまります。
親イスラエル系の団体による献金やロビー活動が米国政治で大きな力を持つことは、多くの報道や研究が指摘してきました。けれども「米国の超富裕層のほとんどがユダヤ系」「議会はユダヤが占める」「ウクライナ戦争もユダヤ」といった言い方は、記録で裏づけられるものではありません。特定の民族をひとまとめにして国を動かす主体とみる語り方は、歴史の中で偏見と結びついてきたものでもあります。本稿では、献金とロビーという確かめられる事実の範囲で受け止めることにします。
オバマ元大統領が10月24日、11月3日の中間選挙に向けてオハイオ州クリーブランドで民主党候補を応援し、トランプ政権を「混乱と残酷さ」と痛烈に批判した、というニュース。先生は「これこそが」と身を乗り出されました。日本人のための報道になっていない典型だ、と。
日本人に必要なのは、演説の言葉ではなく背景です。先生は日本の例から入られます。高度成長期、国民が稼いだうち税や医療費などで取られるのは25%ほどだった。それが今は50%。百万円稼いで七十五万円使えたのが、五十万円しか使えなくなった。消費税を下げろという声の根はここにある。
同じ物差しで米国を見ると、国民が新たに稼いだ分のうち富裕層に渡る割合は、もとは三割ほど。それがクリントン政権で六割、オバマ政権で九割五分になった、と先生は言われます。民主党は本来労働者の党なのに、資金の基盤を求めて資本家の側へ回った。いま、かつて民主党を支えた白人労働者の票がトランプ氏に流れ、製造業を取り戻そうとするトランプ氏のほうが昔の民主党の政策をとっている。党の役割が入れ替わってしまった——これが先生の見立てです。
財務省の示す国民負担率(税と社会保障の負担が国民所得に占める割合)は、1970年度には2割台半ばで、近年は4割台半ば。財政赤字の分を加えた潜在的国民負担率は5割前後とされます。先生の言われる「25%から50%」は、この流れとおおむね重なります。ただし分母は国民所得で、GDPではありません。
「95%」は、カリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ教授の推計として知られる数字です。2009年から2012年の景気回復期に生じた所得の伸びのうち、95%を上位1%が得た、というもの。クリントン政権下の拡大期(1993〜2000年)は45%、ブッシュ政権下の拡大期は65%でした。
数字そのものは記録にあります。ただしこれは「上位1%がどれだけ得たか」の推計で、「民主党政権が取った」という意味ではありません。税や公的給付を含めると差は縮む、との指摘もあります。どこまでを政権の政策の結果とみるかは、記録からは決められない、議論の分かれるところです。
オバマ氏の話から、先生は一気に百三十年前へ遡られます。表面だけを伝える報道は今に始まったことではない。大東亜戦争も、そうして起きた、と。
先生によれば、米国は開戦の五十年ほど前から日本を攻める計画を持ち、ハワイ、グアム、フィリピン、太平洋の島々を順に押さえ、中国と結び、インドネシアを押さえるオランダ、シンガポールを押さえる英国と手を組んで、最後に日本を締め上げた。「なんでハワイを取るの、なんでフィリピンを取るの。全部、日本を攻めるための計画だったんです」。
先生が強調されるのは石油と鉄の数字です。日本は石油も鉄も多くを米国から買っていた。そこに包囲網が敷かれ、輸入のほとんどが止まる。戦艦や飛行機が動かない、という話ではない。日本人そのものが飢える話だった、と。
それほどはっきりした事実を、新聞もNHKも伝えてこなかった。真珠湾が奇襲だったかどうかばかりを論じている。本当のことを伝えると困る人がいるから、忖度して遠慮する。それが今の報道にもそのまま続いている、と先生は言われます。受信料を取っているNHKは、米国にでも、オバマ氏にでもなく、日本国民に遠慮すべきだ——この回の題は、この一言から取りました。
米国がハワイを併合し、米西戦争の結果フィリピンとグアムを得たのは、いずれも1898年です。対日戦争計画として知られる「オレンジ計画」は、日露戦争直後の1906年ごろに検討が始まり、1919年に非公式に、1924年に正式に策定されたとされます。先生の言われる「1890年から」「五十年計画」は、計画そのものの起点としてはやや早く、ハワイやフィリピンの取得まで含めて一つの計画とみるかどうかは、解釈の分かれるところです。
米国は1941年7月に在米日本資産を凍結し、8月1日に石油の対日全面禁輸に踏み切りました。英語圏の研究書には、同年12月までに日本の石油供給の9割以上が断たれたとの記述があります。先生の「九割」という数字は、この記録と重なります。
一方で、真珠湾攻撃が「奇襲」だったかどうかは今も研究者の間で論じられている問題で、報道がそれを扱うこと自体が誤りとは言えません。記録から言えるのは、開戦に至る経済の締めつけがどれほど深刻だったかが、一般の報道ではそれに見合うほど伝えられてこなかった、というところまでです。
ノルウェー軍の演習で使った中国系のレンタカーに、兵士の出入りや走った道、施設の扉を開ける暗証番号まで記録されていた。米国防総省は、名前を変えて大学に残っていた孔子学院を、安全保障上の脅威に指定した。二つのニュースを受けて、先生は「日本はもっとひどいんですよ」と言われます。
先生の言い方は独特です。中国が悪いというより、中国はそれを正しいと思ってやっている。スパイ活動は国家の権利だと言っている。問題は、それを許している日本の側だ、と。
例として挙げられたのが土地です。農地は本来外国人には売れないはずが、農業委員会や自治体の緩さから売られている。北海道の水源、自衛隊基地の隣の土地。中国の土地は国有で日本人には売らないのに、日本は個人所有だからいくらでも売る。外国人への売却を制限する規則は作れるのに、作らない。
もう一つは中国の二つの法律です。日中が戦争になれば、日本に住む中国人も中国の側に立たなければならない、という趣旨のもの。先生は、戦時には敵国の人を収容し、自国の側につく人は自国の軍に入れるのが国際的な通例で、日米戦争のときの日系人も実際にそう扱われた、と指摘されます。中国はそれを隠しているわけではなく、公の場で決めている。それを国会でも議論せず、NHKも報じない。日本人は二重人格なんじゃないか、と。
ノルウェーの件は、同国の経済紙が10月8日に報じました。9月の首都演習で使ったレンタカー(少なくとも2台は中国・長安汽車系のブランド)の車載カメラに、乗り降りや移動、ゲートで入力した暗証番号が残っていたというものです。ただし映像が外部へ送られたことは確認されておらず、専門家からは中国製に限った問題ではなく、軍の運用の問題だとの指摘も出ています。
孔子学院について、ヘグセス国防長官は30大学で名称を変えた80の拠点を確認し、この2か月で解体したと述べています。
内閣府が重要土地等調査法に基づいて公表した令和6年度の調査では、重要施設の周辺などの注視区域で、外国人・外国系法人とみられる者による取得は3,498筆個、取得総数の3.1%でした。国・地域別では中国が1,674筆個で最多です。「基地の隣はだいたい中国が買い占めている」という表現は、この数字からは支持されません。他方、届出に国籍を書かせる仕組み自体が令和8年4月から順次始まったばかりで、記録が実態をどこまで捉えているかにも限りがあります。北海道の水源の「ほとんど」を中国が持っているという点も、公表資料で確かめることはできませんでした。
中国の国家情報法第7条は、あらゆる組織と国民に、国の情報活動への支持・協力を求めています。国防動員法が在外の中国人にも及ぶかについては、国会で繰り返し質問されてきましたが、日本政府はこれまで明確な見解を示していません。条文に「日本人と戦え」と書いてあるわけではなく、先生の言い方は、両法をあわせた最悪の場合を述べたものと受け止めるのがよいと思います。
高市首相は10月17日、秋季例大祭に合わせて「内閣総理大臣 高市早苗」名で真榊を奉納し、参拝は見送りました。韓国外務省は「深い失望と遺憾」を表明しています。
先生はまず、謝る相手という筋道から話されます。日本が戦った相手は中華民国で、いまの中国共産党の政権でも、戦後に生まれた韓国の政府でもない。国が替わっていれば、普通は前の時代のことを謝らない。そうでなければ、元寇まで遡ってきりがない。オバマ大統領が広島を訪れたように、態度で示して区切りをつけるのが歴史の扱い方だ、と。
戦犯の合祀についても、先生は「法律的に筋が通らない」と言われます。東京裁判の判決は受け入れたが、サンフランシスコ平和条約の後、国会は戦犯の赦免を決議し、国内では戦犯として扱わないことにした。それを今になって持ち出すなら、国会でもう一度決め直すのが民主主義の筋道だ。日韓も、基本条約で過去には遡らないと約束している。
だから先生がNHKに求めるのは、「奉納した」と事実だけを流すことではなく、それの何が問題なのかを言うことです。問題だと言うのなら、国会決議を覆せと言わなければならない。それが言えないのなら、問題視する側に根拠がないことを伝えるべきだ、と。
国会は1952年から55年にかけて、戦犯の釈放・赦免を求める決議を衆参で計5回可決しています。1953年8月3日の衆議院「戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議」を全会一致とする国会資料がある一方、日本共産党は自党が決議に反対し、議席があった時期には反対討論もしたとしています。先生ご自身も「共産党も含めて、と記憶しているが、違っていたら寄せてほしい」と断っておられた点で、記録の上でも見方が割れています。
1952年には法務総裁の通達で、拘禁中に亡くなった戦犯を「公務死」として扱うことになり、援護法や恩給法も改正されました。政府は2005年の答弁書で、東京裁判などの刑は「我が国の国内法に基づいて言い渡された刑ではない」としています。ただし、これらは釈放や遺族の援護をめぐる決議・法改正で、「戦犯という言葉を使わない」「合祀する」と国会が決めた記録は見当たりません。いわゆるA級戦犯の合祀は、1978年に靖国神社が行ったものです。
1945年9月2日の降伏文書には、中華民国も連合国の一員として署名しています。日本は1952年に中華民国と平和条約を結び、1972年に中華人民共和国と国交を正常化しました。韓国とは1965年の日韓基本条約と請求権協定で、請求権の問題は「完全かつ最終的に解決」されたと確認しています。
全国のインフルエンザ患者が1医療機関あたり9.08人、前年同期の約2.8倍で、982の学校などが休校や学級閉鎖になっている、というニュース。先生は「厚生労働省も医学会も何も言わないけれど、これは重要なニュースなんです」と、少し長く科学の話をされました。
人類は何百万年もウイルスとともに生きてきたのに、それが分かったのはつい最近のこと。病気の原因が細菌だと分かってから百数十年、ウイルスが電子顕微鏡で見えるようになったのは二十世紀に入ってから。そしてインフルエンザには不思議な性質がある。A型が流行る年は、B型が遠慮して出てこない。新型コロナが流行った三年ほどは、インフルエンザがほとんど姿を消した。コロナが退くとインフルエンザが戻り、しかもそれ以来、流行の始まりが毎年早い。
「こういう時が、科学者がいちばん頑張る時なんですよ」。謎が残っているところを解けば、流行を抑えられるかもしれない。学会で発表し、賞をもらい、偉くなる——それも正しいことだ。なのに「今年はA型です」と言うだけで、理由は分からないと言う。理由が分からないのに、ワクチンが効くはずがない、と先生は言われます。
先生はさらに、ウイルスは人間の共存相手で、赤ちゃんがウイルスに触れることで人間としてきちんと生きられるようになる、という見方を紹介されました。どういう形で接すれば無害に共存できるのかが分かれば、ウイルスの病気そのものをなくせるかもしれない。受験生のためにも、これを機に大きく進歩してほしい、と。
電子顕微鏡を作ったエルンスト・ルスカがノーベル物理学賞を受けたのは1986年です(番組では1978年と言われましたが、記録では1986年)。ルスカが最初の電子顕微鏡を開発したのは1933年。ヒトのインフルエンザウイルスが初めて分離されたのも1933年で、こちらは英国の研究者によるものです。スペイン風邪(1918〜20年)の死者数は推計に幅があり、数千万人とされます。
コロナ禍の間にインフルエンザがほぼ姿を消したことは、国内の統計で確かめられます。ただ、その理由がウイルス同士の「干渉」なのか、マスクや渡航制限といった対策の効果なのかは、研究者の間でも決着していません。先生の言われるとおり、解かれていない謎の一つです。
番組で紹介された今季の数字は報道によるもので、本稿では厚生労働省の週報の該当回までは確認できていません。
2016年と今年7月の熊本地震で液状化した地点を比べると、震度6強以上の揺れで96%が再び液状化した一方、地盤を強くする対策工事をした所では被害がゼロか軽微だった——防災科学技術研究所の調査で分かった、と報じられました。専門家は事前の対策を訴えている、と。
先生の感想は短いものでした。「今ごろそんなことを専門家が言ってるの」。熊本は断層帯の上にあり、同じ場所で繰り返す。地盤と地震の関係は、地震予知よりずっと手前の原理原則のはずだ。一足す一が分からないのに微分方程式が解けますか、と言っているのと同じだ、と。
ここで見落としたくないのは、記事の後半です。対策工事をした所は、被害がなかった。先生がこれまで繰り返してこられた「分かっていることを使えば、身は守れる」が、データで示された形でもあります。
10月16日、気象庁は千島列島でM9.9の地震が起きたとして、北海道から中部地方にかけて緊急地震速報(警報)を出し、8分後に取り消しました。実際にはカムチャツカ半島付近のM6.9で、国内の最大震度は函館市の1でした。気象庁は「本来使用しない観測点のデータが計算に使われた」と説明しています。
先生は「小学生って感じ」と手厳しい。今はデータが自動で取り込まれて計算される。使うべきでないデータがどこから入ったのか、それを言わなければ説明にならない。M9.9は揺れのエネルギーを計算して初めて出てくる数字で、一点の観測からは震源も出ない。記者会見で、誰もそこを聞かなかったのか。責任問題になるから曖昧にしたのではないか、と。
マグニチュードは対数ですから、9.6と9.9でも大変な差です。それを9.9と出した誤りの重さを考えれば、と先生は言われました。
「令和8年熊本地震」は2026年7月28日、熊本地方を震源とするM7.1(暫定値)の地震で、最大震度7を観測しました。2016年の地震の後に地下水位を下げる液状化対策を行った熊本市南区の範囲では、今回の調査範囲で液状化は確認されなかった、とする学会の速報があります。一方で熊本市は、市内10地区で液状化を確認しています。番組で紹介された「96%」の数字そのものは、本稿では一次資料にたどり着けていません。
気象庁は当日だけで3回の会見を開き、日本から700キロ以上離れた地震のデータは使わないという運用が反映されず、震源を2回誤って推定したことが原因だと説明しました。設定の不備には「人為的な原因の可能性もある」としています。つまり「どこから入ったのか」について、気象庁は一定の説明はしています。ただ、なぜその設定が働かなかったのかの詳細は、調査中とされたままです。
なお番組では「夜の0時40分」と言われましたが、速報が出たのは昼の12時40分でした。緊急地震速報の警報の取り消しは、2007年の運用開始以来初めてです。
女性のがんによる死亡の第1位は大腸がん、というニュースから、先生はグラフを示しながら年齢とがんの関係を説明されました。男性は五十代半ばから八十代の初めにかけて山のように増え、女性は更年期に向かう頃に一度上がる。高齢だからがんになるのではなく、働き盛りを過ぎて体が変わる時期に起こる。だから「平均年齢が上がったから増えた」という説明は違う、と。
先生はここで、がんは体の中に元から備わっている仕組みで、生きる力が衰えたときに働くのではないか、という見方を語られました。男性のがんが女性より多いのも、そこから説明できる、と。先生ご自身「色々説がありますから何とも言えませんけど」と断っておられ、本稿でも一つの仮説として受け止めます。
胃がんはピロリ菌、肝臓がんはC型肝炎ウイルスと、原因が分かったものは確実に減っている。問題は、原因のはっきりしない肺がんや大腸がんが増えていることです。肺がんについて先生は、タバコよりも、空気のきれいな森林地帯や、コンクリートの建物での多さに注目し、ラドンの可能性を挙げられます。「難しい式にデータを入れて計算したらこうなりました、というのは大体嘘なんです」——裁判で鑑定に携わった経験から、先生はそうも言われました。
国立がん研究センターの統計では、女性のがん死亡で大腸がんが部位別の1位となって久しく、男性では肺がんが1位です。がんで亡くなる人は男性が女性の1.4倍ほどで、先生の言われる「2倍」は、グラフの読み方による差かもしれません。
胃がんとピロリ菌、肝がんと肝炎ウイルスの関係は医学的に確立しています。肺がんとラドンの関連も国際的に認められており、世界保健機関(WHO)はラドンを喫煙に次ぐ肺がんの原因としています。一方で、喫煙と肺がんの関係を小さくみる見方は、医学の主流の評価とは大きく異なります。「森林地帯に肺がんが多い」という点も、本稿では記録で確かめられていません。
番組の冒頭では、先週の日曜日に視聴者の皆さんと山口県の湯田温泉と萩を巡った報告がありました。吉田松陰をはじめ幕末の人々のゆかりの地を、地元のボランティアガイドの案内で回ったそうです。新幹線の沿線から外れた、昔の中心地を訪ねる。一人ではなかなか行きにくい所を皆で、というのが先生の趣旨です。次回は来年3月下旬、京都方面で準備を進めているとのこと。女性向けの未来塾も計画中だそうです。
先生はまず、デンマークがかつて北の一帯に勢力を広げた国だったこと、グリーンランドという名には「緑になってほしい」という願いが込められているらしいこと、そして中世温暖期には今より暖かく人も多く住んでいたことを語られました。網走の流氷も、その頃にはなかった、と。先生がより重く見るのは後半です。大東亜戦争では本土に上陸できず、朝鮮戦争は三十八度線で引き分け、ベトナムでは敗れ、アフガニスタンからも撤退した米国は、西半球で共存を図る戦略に変わりつつある。この合意はその一環だ。米国がアジアからどう引くかは、日米関係がいつまで続くかという問題で、孫の世代には必ず来る。「その時に孫を守るには、どちらへ舵を切ったらいいか」を、今から考えておく必要がある、と。
政府は、AIや半導体など17の戦略分野への投資を促すため、日本政策金融公庫が民間銀行に資金を出し、その銀行が企業に融資する「ツーステップローン」を、メガバンクや地方銀行にも広げる方針です。融資が焦げ付いた場合、損失の一部を国が補償する制度も入れるといいます。先生は「難しい言葉が並ぶけれど、日本人にとってはすごく大きな変化なんです」と解説されました。江戸の呉服屋以来、商売が焦げ付けば夜逃げか破産だった。バブル崩壊でも国はお金を出さず、会社がばたばたと倒れた。大恐慌やリーマン・ショックの経験から、危機の時は国がお金を出せばよい、というのが今の経済学者の大方の見方で、それを実際にやっているのが中国だ、と。ただ先生ご自身は、物を多く使って社会を回せば人の感覚が麻痺する、という考えで、賛否は「考え方の問題」だと言われます。五百円のワインで我慢すればいいという人と、六百円のほうがいいという人と。口をきいてやると言い出す議員が出てこないか、というアシスタントの方の懸念にも、頷くところがありました。
時事通信の10月調査で、高市内閣の支持率は42.4%、5か月連続の低下で発足後の最低となり、男性の支持離れが進んだといいます。先生は、昨年、同社のカメラマンが「支持率下げてやる」と話した音声が中継で流れた件を挙げ、社長も辞めず、きちんとした説明もないまま、同じ社がこうした記事を出すことを問題にされました。
プログラミング言語PHPの脆弱性や、GMOインターネットグループなどへの不正アクセスを受け、政府が省庁横断で対策を急ぐというニュース。先生はまず「PHPと聞くと松下の雑誌を思い出す」と笑いを誘ってから本題に入られました。三、四十年前、こうしたいたずらは愉快犯として扱われ、テレビもそう報じた。しかしAIの時代、人の情報やお金が勝手に使われうる今、愉快犯扱いは今日限りでやめるべきだ、と。
5歳の男の子が赤いランドセルを望み、母親が本人に選ばせたところ、問題なく小学3年生になった、という子育ての記事。先生は「一般的にはその通り」と認めたうえで、性に関わる好みが交差している子どもを、中途半端に「個性だから」と育てると、思春期にひどく苦しむことがある、と注意を促されました。十二歳から二十歳ごろまでは心が非常に不安定で、外からの刺激がその子の命を左右することもある。LGBTの人の人格を認めることと、悩む時期の子どもを守ることは別の問題だ、と。「男女七歳にして席を同じゅうせず」も、思春期を健やかに過ごすための経験から来たものだ、と先生は見ておられます。
東京大学の次期総長選考で、意向投票で2位だった候補が選ばれ、教職員有志が二度目の要望書となる再質問書を出しました。先生は、根本には東大の学問水準の低下と、「女性といえば何でも通る」という風潮があるのではないか、という見方を紹介されました。
10月25日の菊花賞は、武豊騎手のゴーイントゥスカイが鼻差で勝ち、ロブチェンの三冠はなりませんでした。先生が言いたかったのは、レースそのものより、それがほとんど話題にならないことでした。小説も、競馬も、絵も音楽も、心に沁みるものが見当たらない。「この馬がこういう運命を背負って、ついに鼻差で勝ったか」という心の動きが、今の日本から消えかけているのではないか、と。
グリーンランドの合意は、9月18日にトランプ大統領が発表し、22日に署名されました。NATO非加盟国の基地建設を禁じ、安全保障上機微な分野では非NATO・非EU諸国の投資を制限する内容で、デンマークの主権は維持されています。中世温暖期について、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、北大西洋など一部の地域では温暖だったものの、地球全体の平均では現在のほうが高い、という立場です。「今より1.5度ほど高かった」という先生の見方は、主流の評価とは異なります。
ツーステップローンと損害担保は新しい仕組みではなく、日本政策金融公庫が日本政策投資銀行や商工組合中央金庫を通じて、震災やコロナ禍などの危機対応で実施してきたものです。今回の要点は、対象をメガバンクや地方銀行、戦略分野へ広げるところにあります。報道は「損失の一部」の補償としており、焦げ付いた分がすべて国から出るわけではありません。
時事通信の10月調査(9〜12日、個別面接方式)について、同社は下落の背景に農林水産相を巡る問題を挙げています。「支持率下げてやる」の件は2025年10月7日のことで、同社は9日にカメラマンの発言と認めて本人を厳重注意し、社長室長名でおわびを出しました。会見は開いていません。
東大の意向投票(第2回)は、首位の染谷隆夫教授が1,107票、選ばれた藤垣裕子教授が553票でした。大学側は協議の中身を「保秘」として公開せず、文部科学大臣は選考経緯の検証を大学に依頼しています。「女性なら何でも」という点は評論家の見方として紹介されたもので、記録で確かめられる性質のものではありません。
ランドセルの話で先生が触れた事例は、カナダのデイビッド・ライマー氏の件と思われます。乳児期の医療事故の後、医師の勧めで女の子として育てられたもので、本人の意思によらない特殊な例です。記録では、双子のきょうだいブライアン氏は2002年に、デイビッド氏は2004年に38歳で亡くなっています(番組の「24〜26歳」とは異なります)。子どもの好みを尊重することが自信を育てる、という記事の側の考え方も根強く、この話題は専門家の間でも意見が分かれています。
菊花賞は第87回。武豊騎手は7年ぶり、単独最多となる菊花賞6勝目でした。
二時間を超えた回の最後に先生が語られたのは、競馬の話でした。報道の話でも、科学の話でもなく。けれども私には、この最後の話が全体を貫いていたように思えます。
本当のことを伝えれば、困る人がいる。だから伝えない。謎を解くのは骨が折れる。だから解かない。それを続けていると、人は目の前の出来事に心を動かさなくなる。報道が誰に遠慮しているのか、という問いは、私たち自身が何に心を動かしているのか、という問いと地続きなのかもしれません。
先生の言葉を借りれば、遠慮すべき相手は日本国民です。その日本国民の一人として、私も、見えている表面の奥を見ようとすることを、やめずにいたいと思います。
牧正人史先生が昭和三十三年に発見された姓名科学の体系を、デジタルの形で遺す仕事を続けています。お名前から、その方の持つ数理をご覧いただけます。
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