作りたいものと、その中身ははっきりしている。けれど、作り方は知らない。そういう人は、世の中にたくさんいると思います。私もその一人です。この連載では、AIの電さん(AnthropicのClaude)と方位予定帖を作った二日間を、場面ごとに区切って書いていきます。技術の解説ではなく、何を言い、何を見て、何を疑ったかの記録です。
十月二十日(火)の朝十時二十五分。私は外出先で、スマホから電さんにこう書きました。前の晩に代金を受け取る仕組みができたばかりの方位予定帖に、どうしても地図を載せたい。出発点と到達点を、このソフトの上で拾えるようにしたい。いまはスマホなので、職場に戻ったらPCで続きをやる。それまでに考え方をまとめておいてほしい。
仕様書はありません。画面の絵もありません。あったのは、方位学を使う者として「こういう道具が欲しい」という思いだけです。
電さんは、まず考え方を短くまとめて返してきました。地図は無料の仕組みで出せること、出発点は端末の中にだけ保存すること、方位と距離を計算して方位盤の判定へ渡すこと。そのうえで、問いを一つだけ添えていました。方位の区切りは、四正30度・四隅60度か、八方位45度均等か。
私は日ごろから、問いは一度に一つ、答えが一語で済む形で、と頼んであります。スマホの小さな画面でも、これなら考えが散らかりません。
ところが、私は問いにそのまま答えませんでした。流派は選べるようにしてほしい。真北と磁北も選べるように。出発点は自宅と勤務先と、ほかにもう一か所。その数分後には、さらに書き足しました。海外出張も考えてほしい。南半球と北半球を見分けてほしい。距離によって、より正確な方位が出る計算の仕方を自動で選んでほしい。
電さんの問いは、方位学の教科書に出てくる論点でした。私の答えは、暮らしの場面から出てきたものです。出張で海外へ行く人もいる。外国人がこの予定帖を使うこともある。問いが一つずつだったからこそ、私の頭の中にある使う場面が、次々に引き出されたのだと思います。
電さんはそのあいだに計算の部分を組み上げ、公式の検証値と照らして確かめたうえで、もう一つ問うてきました。方位の境目ちょうどに当たる行き先は、どう扱うか。次の方位に入れるか、判定しないか。
私は昼過ぎに、「判定しない」と答えました。いつも境界線の近くの行き先には神経を使います。大事をとって、慎重に行動すべきだという意味を込めて、です。この答えは、計算からは出てきません。方位を頼りに暮らしてきた者の感覚です。
続く既定値の問いには、「はい」を五回続けました。最後に、外国人が使うときは現地の時間で判定するよう頼み、決めごとは昼の十二時過ぎにすべてそろいました。朝の注文から、二時間足らずです。
振り返ると、私がしたことは三つだけです。欲しいものを言葉で話すこと。問われたことに答えること。そして、問いの外にある使う場面を書き足すこと。
仕様書を書ける人はそう多くありません。けれど、自分の仕事や暮らしの中で「ここが困る」「こうだと助かる」と言える人なら、たくさんいます。電さんとの仕事は、その言葉から始められます。
ただし、言葉だけで形が決まるわけではありません。人はたいてい、頭の中だけでなく、目の前の素材と格闘しながら形を決めていきます。卵をつぶさずにつかむのが機械にとって難しいように、実際に触ってみて初めて分かることがある。地図は、この日の午後に予定帖へ入りました。そこから先の、画面を見ながらの格闘は、第三回「見て直す」に書きます。
予定を書き込むと、その日の方位盤が重なる予定帳です。地図で行き先を選ぶと、方位と距離、その日の吉凶まで分かります。予定の記録と今日の日盤は無料です。
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牧正人史先生が昭和三十三年に発見された姓名科学の体系を、デジタルの形で遺す仕事を続けています。方位予定帖の暦も、この仕事の中から生まれました。
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